コーヒー

まだ小学生の頃、時折両親がコーヒーを飲むのを見ていて強烈にあこがれを抱いていたのを、今でもはっきりと覚えています。


私の母は食卓に「子供に食べさせていいのか!?」と思えるような食材を平気で出す人でした。もちろん何の考えもなしに出しているわけではなく、我が家ではあくまで父を中心に食卓が整えられていただけのことです。ですから、子供の私も当然両親と同じものを食べることになります。小学校に入学した時点から山葵も解禁でしたし、食卓には頻繁にキムチが乗っていました。その代わり子供が好むようなおかずは誕生日でもなければ食卓に上ることはなく、おかげで子供にしてはかなり渋い味覚の持ち主になってしまいました(笑)。何せ一番の好物が茶碗蒸しと鰯の刺身(笑)。でも、好き嫌いなく育ててもらえたことには心から感謝しています。


そんな母ですが、コーヒーとコーラだけは中学生になるまで絶対に飲ませてくれませんでした。コーラはそれほど飲みたいと思わなかったのでどうってことなかったんですが(今でもそれほど好きではありません)、コーヒーは痛かった。何せ強烈なあこがれを抱いていた飲み物です。何かの用事で母に連れられて出かけたとき、訪問先で出された場合だけ「飲んでよし!」と許可が出る。ですから、出かけるときには「どうかコーヒーがでますように」と祈るような気持ちでいました。


30年以上も前のことですから、コーヒーは当然インスタントです。それでも飲みたくて飲みたくて仕方がなかった。不思議とまずいと思ったことはないんですね。小学生ですから、あの苦みに「ぐえっ」となりそうなものなんですが、渋い味覚のおかげでおいしいと思いながら飲んでいました(笑)。


その頃の影響があるからか、今でも紅茶や緑茶よりはコーヒーを飲むことの方が圧倒的に多く、しかも1日最低5杯は飲みます。昔は「コーヒーを飲むと癌になる」だとか「カフェインが多いから体に毒だ」とか言われていましたが、いまでは緑茶や紅茶よりもカフェインが少ないことは明白ですし、癌になるどころか癌抑制効果があることまでわかっています。


西洋アンティークに興味を持ったきっかけも、やはりコーヒーでした。蕎麦猪口に合う銀のスプーンを買ったのが最初の一歩です。私のコレクションの中心が銀器であり、中でもティースプーンやコーヒースプーンが圧倒的に多いのは、やはり「コーヒー好き」から来ているのでしょう。


写真の3点はいずれもプジョー社のコーヒーミル。左上は1950年代の品で、最初に購入したもの。右上は旅行用のミルで、クランクが折りたためるようになっています。3点の中で最も古く、19世紀の品です。右下は1936年に発売された「Le Ric」というモデル。典型的なアールデコスタイルのデザインが大変気に入っています。プジョーは18世紀に鍛冶屋としてスタートしたのが始まりです。コーヒーミルの製造は1840年から。自動車よりもコーヒーミルの方が歴史が古いんですね。


コーヒーミルをご紹介したのでおわかりかと思いますが、私は基本的にコーヒーを豆で購入します。職場では余裕がないのですでに挽いてあるものを購入して使っていますが、自宅ではちゃんと豆から挽いてコーヒーを淹れます。コーヒーには酸化が大敵。挽いた状態ではそれだけ空気に触れる部分が多くなってしまいますから、鮮度を保つにはやはり豆で保存しておくのが一番です。出がらしの粉は乾燥させて灰皿に入れておいたり脱臭剤として使ったりしています。コーヒーの脱臭効果は抜群で、お茶用の紙パック二つで十分効果があります。おかげで一人暮らしを始めてから脱臭剤を買ったことがありません。母に勧めてみたところ、抜群の効果に驚いていました。


・・・それにしても「コーヒーの脱臭効果」で盛り上がるとは・・・まるっきり主婦の会話ですよね。一応母と「息子」なんですけれど(笑)。