アンティーク・ジュエリーを集め始めてからだいぶ立ちますが、いつの頃からか品物の「裏側」が気になるようになってきました。


裏側なんぞを気にする物好きは私だけなのかと思っていたら、同好の士の皆様方も「裏側が気になります」とおっしゃっていらして、「なぁんだ」と安心すると同時にますます親しみがわいてくる今日この頃です(笑)


私がジュエリーの裏側にこだわるのには、それなりの理由があります。できの良いジュエリーというのは裏側まで一切手を抜いていないんですね。

                             

写真は私が所持しているネックレスの裏側です。陰刻で葉脈が描かれいるのがおわかりになるでしょうか。良い品物というのは、このように裏側までこだわって作られています。メダルジュエリーの場合、裏側を見れば、重さのあるしっかりとした作りなのか薄手の軽い作りなのかが、或る程度判断できます。また、メレダイヤを用いたメダルジュエリーの場合、裏側からダイヤが見えるか見えないかでメダルの厚みを予想できます。


さらに、裏側を見ることでメーカーを特定できる場合もあります。


Fonsèque et Oliveはアールヌーボー期の主要なジュエリー・メーカーの一つであり、質の高いジュエリーを製作していたことで知られています。このメーカーのクラバット・ピンには非常にはっきりとした特徴があります。


 
写真は最近入手したFonsèque et Oliveのクラバット・ピンの裏側です。ピンとメダルを留めてある部分にはっきりとした特徴が現れています。


①メダルを留めている部分がY字型ではなくT字型であること
②T字型の両端が巻きあげられていること
③ピンが抜けにくいようにねじれが施されていること
④ねじれの間隔が徐々に狭められていること


①と②については、Julien Duvalのクラバット・ピンにも同様の特徴が見られますが(ただし、T字型というより「小さなY」字型と言った方が適切です)、Duvalのピンにはねじれが施されていません。


フランス製のクラバット・ピンの場合、ピンはほとんどY字型です。上記のようなピンの特徴はFonsèque et Oliveにしか見られず、メーカーを特定する決め手の一つとなります。私が所持しているFonsèque et Oliveのクラバット・ピンには、すべてこのタイプのピンが使われています。


時折I字型のピンを見かけることあります。アメリカではI字型が一般的ですが、フランスでは「チャリティ用の量産品」であるとか、「メダルが小さすぎてY字型が使えない」といったようなごく限られた品物にしかI字型のピンは用いられません。Laliqueの「Le Poilu」は量産品であるため、18金の品にもI字型のピンが使われています。


アンティーク・ジュエリーを購入する際、私は必ず裏側をチェックします。これは実際に手に取ってみる場合でも、ネット・オークションで写真を見ている場合でも全く同じです。ネット・オークションですと、裏側の写真が掲載されていないことがあるので、そういう場合にはあまり入札をしません。とはいえ、どうしても入札したいときはあるので時折冒険はしますが・・・。そういえば、このクラバット・ピンも裏側の写真は載っておりませなんだ。煩悩の泉はしばらく涸れそうにございません(笑)。


裏側