手触り

和物であれ洋物であれ、骨董を購入するとき、私は必ず「手触り」を確認します。ネット・オークションで購入した場合には、品物が到着した後、しばらくの間手に持って、その品物の「手触り」を確かめます。もちろんマークや刻印も確認しますが、それだけに頼るのではなく、じっくりと触れてみて、それから真贋を判断するようにしています。


時代を経てきた物ですから、現代の物とは微妙に手触りが違います。古い物はひたっと手になじみます。新しい物はどこかよそよそしい。ブロンズや銀器、木製品は、はっきりとその違いがわかります。古伊万里は比較的わかりづらい方ですが、それでも、指先に神経を集中させると違いがわかります。ただし、普段から本物を使って触れていないと難しいかもしれません。


ジュエリーも、古い物はひたっと手になじんできます。たとえ未使用で出てきた品物であっても、不思議と手になじむんです。指輪ですと、あまりに手になじんでしまうために、ふとはめていたことを忘れてしまい、荒っぽい作業をした後に気づいて大慌てることすらあります。


こういった心地よい手触りも骨董の魅力の一つですが、中にはその手触りに快感すら覚えてしまうような品物もあります。

                          

写真の二つの指輪は「はめていたことを忘れていて慌てた」経歴の持ち主です(笑)。特に右側のPiel Freresの指輪は、手の薬指にぴたりとおさまった上、はめたときの感覚が本当に心地よかったんですね。お値段を伺って買おうかどうか迷っていたんですが、はめた瞬間に買うことを決めました(笑)。

                                

この2つの指輪以上に快感を覚えたのがこのトレイです。


「オリジナルの状態」にはこだわらない私ですが、コンディションの善し悪しについては、それなりに注意を払います。あくまで「使う」と言うことを前提に考えていますから、どうしてもコンディションは気にかかります。そういう意味で言うと、このトレイのコンディションは「中の下」くらいですから、普段の私であれば決して購入しないレベルです。それでも購入してしまったのは、手に持ったときの感覚があまりにも気持ちよかったから。吸い付くようにぴたっと手に収まって、あまりの快感に背筋がぞくぞくしたほどでした。


完全なオリジナルでないということでお店のオーナーが備品として使っていた物を、無理を言って譲って頂きました。このときは私が私ではありませんでしたねぇ(笑)。普段は絶対に無理なお願いはしないんですけれど、このトレイの時だけは本当に強引でした。今思い出してもびっくりするくらい(笑)。


ちなみにこのトレイ、実はあまり使っていません。使おうと思って手に取ると、あまりの快感に手から離せなくなり、トレイとしての役割を果たせない(爆笑)。そういうわけで、もっぱら手にとって触れたり眺めたりして楽しんでおります。