プロフェッショナル

今日は病院に行ったついでに、修理をお願いしていた懐中時計を受け取ってきました。ひな菊とひなげしの模様の金時計です。

                                    

預けていたのは、西友の中にあるいつもの時計屋さん。お願いした時計の数は、今回で9つ目。置き時計が1つ、腕時計が2つ、懐中時計が6つです。いつもながらすごいなぁと思うのは、修理に出した時計のほとんどが1日2〜3分程度しか狂わないこと。置き時計や腕時計にいたっては、1日1分以内の誤差です。


最初に持ち込んだ置き時計がよほど強烈だったのか、私が動かない時計を持ち込むたびに「今度はどんな時計なの?」と、何とも言えず楽しそうな顔をなさいます。修理が済んで受け取るときには「大事に使ってくださいね」と、必ず声をかけてくださいます。

                                     

パッテク・フィリップの腕時計のベルトを交換したときも、こんなアドバイスが。
「牛革はやめておきなさいよ。止める部分の真ん中を削らなくちゃならないから、牛革だと柔らかいからすぐに切れちゃうよ。蛇か蜥蜴が硬いからオススメだね。」


実は、今日初めて知ったのですが、この時計屋さんはその昔、東京でアンティーク・ウォッチの修理をなさっていたんだそうです。道理で楽しそうになさっているはずだと、思わず納得。その頃のつてがあって、古い部品を手に入れることができるのだとか。


「父親の形見の腕時計が動かなくなっちゃったんだけど、どこの時計屋に頼んでも『直せない』って断られちゃうんだよね」
ある日、こんなことを言ってきた職場の同僚にこの時計屋さんを紹介したことがありました。時間はかかりましたが、しっかりと直ってきたとのこと。その時の話を同僚から聞いたんですが、いかにもその時計屋さんらしい発言ばかりで、思わず笑ってしまいました。


「うわ〜、こりゃぁひどいなぁ。前に修理した時計屋が合わない歯車を無理矢理押し込んでるよ(怒)。」
「こんないい加減な修理見たことないねぇ。これじゃあどこへ持って行っても断られちゃうねぇ。」
「直して見せますよ。」


いやぁ、何ともプロフェッショナルなご発言です(笑)。


実は、この時計屋さんに持ち込んで「さすがに修理できない」と断られた10個目の時計があります。ひな菊柄の銀の懐中時計です。この時計の場合は髭ゼンマイが切れていたために修理が不可能でした。髭ゼンマイを作る技術がすでに失われており、他の懐中時計から調達することもできないのだそうです。


できることとできないことをはっきりとわきまえている。どんな職業であれ、それがプロフェッショナルなんだと、私は思います。この時計屋さんを心から信頼しているのは、正真正銘のプロフェッショナルだからです。

  



修理をお願いした時計たち。右端が直せなかった時計。