アンコール
年明けになるだろうと思っていた「ワグナーシリーズ」のスプーンとティーストレーナーが年末に届き、幸せな気持ちで年の瀬を過ごすことができました。私の知る限りでは、このシリーズも「ジークリンデ」と「巡礼に出るタンホイザー」の二つを残すのみです。なかなか出てこない品ではありますが、気長に待っていたら年末にどどっと入手できたので、これからも気長に待つつもりです。
「ワグナーシリーズ」のスプーンを集めている私ですが、お恥ずかしいことにワグナーは全くと言っていいほど聴きません(笑)。もちろんCDは一枚も持っていませんし、知っているのは有名な「ワルキューレの騎行」くらい。何ともお粗末な話です。
クラシック音楽が嫌いなわけではないんです。ただ、好みがかなり偏っているんですね。一番好きなのがクルト・ワイル。その他、ラヴェルやドビュッシーを好んで聴きます。気がつけばクラシック音楽も世紀末が好き(笑)。その一方で、小学生の頃リコーダーの合奏団に所属していてバロック音楽を演奏していたこともあって、ヘンデルやバッハ、スカルラッティも好きだったりします。要するに間がすっぽりと抜けているわけです(笑)。
加えて、私はオペラやオーケストラよりはピアノのソロや室内楽を好むので、オペラ中心に作品を残したワグナーは私にとって縁遠い存在でした。ただ、せっかくここまでスプーンを集めたのですから、これを機にワグナーも聴いてみようかという気持ちにはなっています。
さて、そんな私ですが、何度かオーケストラやオペラを聴きにコンサートへ足を運んでいます。その中で、「アンコールまで30分」というすさまじい経験をしたことがあります。
大学時代、マルタ・アルゲリッチさんのピアノ、小澤征爾さんの指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏でチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番のコンサートを聴きに行ったときのことです。この日のアルゲリッチさんは大変調子がよく、バリバリとピアノを弾いていました。まさに「バリバリ」という擬態語がふさわしい弾きっぷりで、オーケストラがついて行くことができず、小澤征爾さんは懸命にアルゲリッチさんとオーケストラをまとめようとなさっていました。有名なキリル・コンドラシン指揮のライブ盤より演奏時間が短かったことからも、彼女がいかにバリバリ弾いていたかわかります。
その素晴らしい演奏に、観客は総立ちでアンコール。ところがアルゲリッチさん、何かご不満があったらしく、舞台に出て挨拶はなさるものの、いっこうにアンコールに応える気配なし。三回目くらいから、舞台から引き下がる際に小澤征爾さんがなにやら彼女に話しかけはじめました。延々と続くアンコール。何度も舞台に出て挨拶なさるお二人。それでもアルゲリッチさんはピアノに向かおうとしません。小澤征爾さんは挨拶の時以外、ずっとアルゲリッチさんに話しかけていらっしゃいます。おそらくアンコールに応えるよう説得なさっていたのでしょう。
10回を過ぎたあたりから、私は「アンコールはないだろうな」と思っていました。そのうちお客さんもあきらめて拍手をやめ、帰り始めるだろうと。ところが、ほんの数人席を立っただけで、お客さん達は帰ろうとしません。それどころか、アンコールの拍手すらやめようとしません。
こうなってくると、好奇心の強い私としてはことの成り行きを最後まで見届けたくなります(笑)。
アンコールに及ぶこと20数回、時間にして約30分後、アルゲリッチさんはようやくピアノに座り、第三楽章を演奏してくださいました。小澤さんの説得と観客の拍手に根負けしたと思われます(笑)。「世界のオザワ」を実感した瞬間でした(笑)。
ところで、このコンサートのチケットですが、以前「食事を抜いて紅茶だけで数日を過ごして貧血を起こした」友人が、四日間世話をしたお礼にと言うことでプレゼントしてくれたものでした。当然、彼と一緒に行ったわけですが、飽きっぽい私が30分も拍手をし続けていられたのも彼のおかげです。何せ、5回目のアンコールあたりからアルゲリッチさんがアンコールに応えてくれるまで、小澤征爾さんとアルゲリッチさんの会話をアテレコで演じきってくれましたので(笑)。
後日談:その後「巡礼に出るタンホイザー」のスプーンを入手しました。残すは「ジークリンデ」のみとなりましたが、まだカタログでしか見たことがないレアアイテムなんですよね・・・。
さらに後日談:最後の一つだった「ジークリンデ」をついに入手しました! これで「ワグナーシリーズ」は、私の知る限りすべてそろいました!
上の段は全て『ニーベルングの指輪』から 左から 「ラインの乙女」 「ラインの黄金」 「ヴォータン」 「巨人」 「ジークリンデ」 「ブリュンヒルデ」 「ワルキューレ」 「ジークフリートⅠ」 「ジークフリートⅡ」 「さすらい人(ヴォータン)」 「三人の女神(ノルン)」 「ハーゲン」 ズラリと並べるとなんだか壮観です(笑) |
下の段は別の代表的なオペラ作品から 左から 「ヴェーヌスとタンホイザー」 「巡礼に出るタンホイザー」 「トリスタンとイゾルデ」 「パルジファル」 |